男性型脱毛症(AGA)の治療薬であるプロペシアですが、健康保険は使えず全額が自己負担になるということはある程度知られているとは思いますが、医療費控除の対象になるのでしょうか。というか、この2つ、健康保険が使えるのかどうかということと、医療費控除の対象になるのかどうかということの違いからしてよく分からないという人が多いでしょうから、まずそのあたりから説明しましょう。
医薬品について、健康保険が使えるのかどうかというのは、結局のところはその医薬品が薬価基準に収載されているかどうかによるのですが、これはあくまで結果論であって、どういう医薬品であれば薬価基準に収載されるのかを説明しないことには始まらないでしょう。どんな医薬品であっても、臨床試験が行われた後には厚生労働省に承認申請が行われますが、承認後、その医薬品が薬価基準に載せられるかどうかが決まります。言い換えれば、承認されるかどうかということと、薬価基準に収載されるかどうかということは別の問題であって、その薬が健康保険という財政を使ってまでも医薬品として使ってもらうだけの意味があるかどうかということで判断されます。つまり、たとえそれなりに効き目のある薬であっても、そもそももとの病気が病気というようなものではないとか、現在の医療環境などを考えた場合に、わざわざ保険財政を圧迫してまで治療が必要なものとは考えられないといった場合には、その薬は薬価収載されず、従って使用する場合には健康保険が適用されずに全額が自己負担になります。プロペシアはそういう薬の一つです。一方で、医療費控除の対象になるのかならないのかは、厳密にはこの薬価基準収載とは別の話です。薬価基準に収載するかどうかを決めるのは厚生労働省の管轄ですし、医療費の控除の対象になるかどうかを決めるのは国税庁の管轄です。言っては悪いですが日本の行政ははっきり言って縦割りであり、縄張り意識もまだまだ抜け切れていませんので、この2つを統合しようとか、完全に一致させないのは何かおかしいし国民にとっても分かりにくいので何とかしなければならないなどという話は聞いたことがありません。ただ、実際にはこの2つは対象となるものが似ていることは事実です。そのために混乱が生じていたり、この2つは基本的には同じものであるという考え方が広まっていることも事実かもしれません。しかし実際には上にも書いたようにこの2つは別々の省庁が管轄している別々の事項です。一本化してしまえば、どちらか一方の省庁で何が対象に当てはまるかを判断している職員は失業もので、仮にも国家公務員を失業させるようなことができるはずはないのです。
医療費の控除対象になるかどうかについては、国税庁のホームページにある程度の指針が記載されており、医師による診療費又は治療費や、治療又は療養に必要な医薬品の購入費がその対象になるとされています。
プロペシアは、この指針を普通に読む限りは対象に当てはまると考えられます。男性型脱毛症(AGA)に対する治療薬というのは、あくまでも健康保険を適用させるほどに、逼迫している保険財政をこれ以上圧迫させるほどの薬ではないと厚生労働省が考えているだけであって、厚生労働省に承認された医薬品であることには違いはなく、その医薬品を利用することが適切であると医師によって診察、診療を受けた上で治療を行っていることには違いはないからです。ですから、普通に考える限りは医師による診療費又は治療費に含まれてくると考えられます。ですから、堂々と医療費として控除申告をして下さい。もちろん、申告するためには領収書が必要ですから、医療機関からもらった領収書は捨てないきちんと保管しておく必要があります。